VOL.14 「あまおう」の商標権について

VOL.14 「あまおう」の商標権について

2021年06月25日 【

今回は前号に引き続き、「あまおう」の商標権に関する説明をしたいと思います。

 

前号のおさらいですが、農協は「果実」、「野菜」、「苗」を指定して「あまおう/甘王」を商標登録しております。その一方で、「菓子」についてはA社が商標登録しており、したがって農協は無断で「あまおう/甘王」というネーミングの菓子を販売することができません。皆様の中には、どうしてA社は有名な苺のネーミングである「あまおう」の商標権を取得できたの?と疑問に思われた方がいらっしゃるかもしれません。

2018年4月現在で「菓子」を指定した「あまおう」が商標登録されていなかったと仮定します。農協とは関係のないB社が「菓子」を指定して「あまおう」を2018年4月に商標登録出願した場合、B社は商標権を取得できるでしょうか?推測になりますが、B社は商標権を取得できない可能性が高いです。では、なぜA社とB社との間でこのような差が生じるのでしょうか。その要因は出願日と周知性にあります。

「あまおう」は2018年4月現在、果実である苺のネーミングとして少なくとも福岡県及びこれに隣接する地域において広く知られております。そのため、B社による出願商標は、農協が使用する苺「あまおう」との間で出所の混同を生じるおそれがあるとして、拒絶される可能性が高いです(商標法第4条第1項第15号)。この規定は需要者保護の観点から設けられたものです。

その一方で、A社による「あまおう」の出願日は2002年です。農協による「あまおう/甘王」の出願日も2002年です。農協が販売するあまおう苺の2002年頃における周知度はあまり高くなく、そのためA社による出願商標は出所の混同を生じるおそれがある商標に該当せず、登録に至ったものと思われます。

 

ところで、デパートや土産店等に入ると、「あまおう苺を使用」という宣伝をしながら販売する菓子をよく見かけます。宣伝では「あまおう苺」と表示されているものが殆どで、果実である苺のネーミングであることが強調されています。また、「あまおう苺を使用した菓子」という表現は、内容物を表示したにすぎません。

以上を勘案して、このような菓子の販売行為は、菓子に対する「あまおう」の商標的使用には該当せず、商標権者の権利侵害を構成しないものと思われます。

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