以前、複数の者が「菓子」等を指定して「そだねー」という商標を立て続けに出願していたというニュースが大々的に報じられました。今回はこれらの出願に係る商標「そだねー」が商標登録を受けられるか、検討したいと思います。
「そだねー」は「そうだね」の方言で、平昌五輪で日本女子カーリングチームが試合中に発言したことをきっかけにメディアが大々的に報道し、これにより世間一般に広まりました。
実は過去に似たような出来事がありました。「ハンカチ王子」、「イナバウアー」がその例です。「ハンカチ王子」は、有名なプロ野球選手が高校時代にマウンド上でハンカチを取り出して汗を拭いたことがきっかけで生まれた造語です。「ハンカチ王子」という商標は、2006年に開催された夏の甲子園以降、16件もの出願があったそうです(そのうち商品「ハンカチ」が属する第24類での出願件数は7件)。
「イナバウアー」は女性の名前ですが、日本の女子フィギュアスケーターが披露した技で一躍有名になりました。なお、出願人は上記社会現象を起こした当人ではありません。
これらの出願商標は、商標法第4条第1項第7号に規定される、いわゆる公序良俗違反を理由として登録が認められませんでした。
4条1項7号は、「公の秩序又は善良の風俗を害するおそれがある商標」は登録を受けることができないことを規定した条文です。
例えば、卑わいな言葉を含む商標、差別的な言葉を含む商標、差別的な表現を含む商標、見ている人に不快感を与える商標、社会一般の道徳観念に反するような商標、等々がこの条文に該当します。4条1項7号は伝家の宝刀的な存在であり、他の条文で拒絶できないが、登録を認めるのは妥当でないような商標に対して度々発動しています。
「ハンカチ王子」、「イナバウアー」は、何ら関係のない者による、流行語が有する顧客吸引力にただ乗りする出願であり、これが公序良俗違反に該当するという理由で拒絶されました。
本題に戻りますが、「そだねー」も同様の理由により商標登録は認められない可能性が高いと予想しております。
公序良俗違反に該当した他の例としては、「仏陀」(尊厳を損ないかねない)、「ムーミン」(著名なキャラクターを無断で出願)があります。
別の視点から考察すると、流行語であることを理由に拒絶された商標は、数年経過した後に再度出願すれば登録が認められるのかもしれません。
今後、このような商標が登場しないか、適宜チェックしていきたいと思います。