VOL.17 「職務発明」について

VOL.17 「職務発明」について

2021年07月16日 【

今回は「職務発明」についてお話します。

 

ある会社の従業員が何かの発明をしたとします。その発明は誰のものでしょうか?この答えは一義的に導けるものではありませんが、原則から申しますと、特許を受ける権利は発明者である自然人に原始的に帰属します。

特許を受ける権利とは、発明者が発明を成すことによって有する権利です。この権利に基づいて、発明者は特許出願を行い、特許権を求めることができます。すなわち、従業員が発明をしたからといって、会社は勝手に自らを出願人として特許出願することができません。しかしながら、従業員は通常、会社の設備を利用し、就業時間内に発明をするのが通常であって、会社は発明の完成に貢献しているとともに、相当の負担を強いられております。それにもかかわらず、会社が何の恩恵を受けないのは不公平といえます。そこで特許法は、従業員が職務としてその業務範囲の中で行った発明(これを「職務発明」と呼びます)については、会社はその発明を無償で実施する権利を認めております。特許法上、この権利を「法定通常実施権」と呼びます(特許法第35条)。この権利により、従業員が会社に内緒で特許出願し、後に特許権を取得しても、会社はその特許発明を無償で実施してもよいことになります。

 

では、会社は法定通常実施権しか認められないのか?答えは「ノー」です。

特許を受ける権利は譲渡することができ、従業員から会社に譲渡され、会社を出願人として特許出願されるのが一般的です。特許権を取得するためには莫大な費用が生じることが理由の一つです。大企業では、従業員が職務発明をしたタイミングで、会社に特許を受ける権利を自動的に譲渡させる「予約承継」に関する契約を予め従業員との間で締結しているケースが殆どです。これにより、例えば従業員が発明を完成した後に会社を辞め、転職先のライバル企業で特許出願を行うような事態を防ぐことが可能です。ちなみに、従業員が会社に特許を受ける権利を譲渡する場合、従業員は会社に対して相当の利益を請求することができます。また、会社は従業員が行った発明であれば何でも予約承継できるわけではありません。予約承継の対象は、従業員が職務としてその業務範囲の中で行った発明に限られます。例えば、文房具メーカーに勤務の従業員が、自動車のエンジンに関する発明を行った場合にまで予約承継が認められるわけではありません。

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