新型コロナウイルスの蔓延に伴い、新たにホームページを立ち上げてオンライン上で商品を販売し、或いは自社サービス(例えば飲食店、宿泊施設、エステ等)の宣伝を行う方が増加しております。
インターネットを利用して事業を行うと、第三者から商標権侵害であると警告されるリスクが高くなります。
商標権侵害を簡単に説明すると、何の権原も有さない者が、他人の登録商標と同一又は類似する商標を、同一又は類似する商品・役務に使用する行為をいいます。
一例を挙げると、Aさんが「菓子」を指定商品にして「ドリームスター」という登録商標を保有していたとします。Aさんと全く関係のないBさんが、「チョコレート菓子」の包装に「DREAMSTAR」という名称を付して販売すると、商標権侵害が形式的に成立します。
AさんがBさんに警告書を送付するということは、「Bさんの行為が商標権に該当する」との心証をAさんが抱いた、ということになります。すなわち、Aさんはそれなりの理由があって警告書を送ったと考えた方がよく、特に弁護士や弁理士が代理人としてついている場合は形式的な侵害を形成している可能性が高いです。
ちなみに、Cさんが「ドリームスター」というブランド名でTシャツを販売する行為は、Aさんの商標権侵害にはなりません。商品が類似しないからです。
次に、Aさんから警告書を受けたBさんが検討すべき事項は以下の通りです。
1.登録商標が本当に存在するか否か(権利が存続しているかを含めて)
2.警告書の送付元が商標権者又はその代理人であるか否か
3.「DREAMSTAR」と「ドリームスター」が類似するか否か
4.「菓子」と「チョコレート菓子」が類似するか否か
5.上記1-4が全てYESの場合、主張可能な抗弁があるか否か
上述したAさんとBさんのケースでは、残念ながら「3.」と「4.」は類似します。
「1.」と「2.」も殆どのケースがYESです。
「5.」の抗弁としては例えば、Bさんの販売するチョコレート菓子(商品名は「DREAMSTAR」)が、Aさんの出願日前から日本国内で有名であった場合、「先使用権」を主張する余地があります。先使用権の詳細な説明は省略しますが、先使用権が認められるケースはきわめて稀であるとお考え下さい。
今回は分かり易い例を挙げましたが、実務上では類否判断に悩むケースが多いです。商標に精通していない方が上記1-4の判断を行うのは難しいので、警告書が届きましたら、お付き合いのある弁理士、弁護士に相談されることをお勧めします。
また、代理人をつけずに社長名義で警告書が送付されるケースも多々あります。このようなケースでは、どのような権利に基づいて警告書を送付してきたのか分からないケースがあります。分かり易い例としては、「Bの販売する商品はAの販売する商品に似ており、そのような販売行為は認められない」といった漠然とした内容のものです。
このような警告書が送付された場合は、相手方に対し、何の法律の根拠条文に基づいた主張なのか、また、権利が警告者に帰属することを確認できる客観的な資料の開示を求められてください。