ピコ太郎およびPPAPが商標登録される可能性(後編)

ピコ太郎およびPPAPが商標登録される可能性(後編)

2017年02月3日 【 商標権

前回に引き続き、今回は権限のない第三者による出願「PPAP」が商標登録される可能性について述べたいと思います。

「PPAP」は①曲名、フレーズであること②正当な権限を有する者よりも第三者が先に出願していること、以上を理由として「PIKOTARO」とは検討内容が一部で異なります。

 

「PPAP」に対して想定される拒絶理由

①3条1項柱書(使用意思)

使用する意思がない商標は、この条文で拒絶されます。「PPAP」の出願人(「本出願人」と称します)は使用する意思を有していないことが想定されます。但し、この拒絶の対策は本出願人でもとれるので、あまり効果的ではないです。

 

②4条1項7号(公序良俗)

公の秩序又は善良の風俗を害するおそれがある商標は、この条文で拒絶されます。

「PPAP」で世界的に著名になったピコ太郎ご本人と全く関係のない本出願人による「PPAP」の出願は、まさにこの条文にあてはまると思います。現実的にこの条文により拒絶される可能性が最も高いです。

 

③4条1項15号

他人の業務に係る商品又は役務と混同を生じるおそれがある商標については、この条文で拒絶されます。

ポイントは2点です。1つ目は、曲名、フレーズである「PPAP」が標章の要件を満たしているか、という点です。

簡潔に説明すると、標章とは、人の知覚によって認識できるもののうち、文字、図形、音、色彩(これらの結合を含む)等をいいます。

参考までに、商標とは、標章のうち業として使用するものをいいます。

上述の定義に照らすと、「PPAP」は標章の要件を満たすと考えられます。

ポイントの2つ目は、他人の業務に係る商品又は役務の存在です。「PPAP」はあくまで曲名やフレーズであって、他人の業務に係る商品又は役務で使用されることによって著名になったわけではありません。

したがって、この条文での拒絶は難しいと思います。

この条文で拒絶できるか否かは、専門家によって意見が分かれるかもしれません。

 

④4条1項19号

需要者の間に広く認識されている商標と同一又は類似する商標であって、不正の目的で使用する商標は、この条文で拒絶されます。

報道によると、本出願人は正当な権限を有する者に売買をもちかけているので、不正の目的と判断される可能性が高いです。

しかしながら、「PPAP」はフレーズとして著名ですが、「商標」として少なくとも周知であるかについては大きな疑問があります。

したがって、この条文での拒絶は難しいと思います。

 

(結論)正当な権限なき第三者による出願「PPAP」は、少なくとも4条1項7号を理由に商標登録されないと予想します。

 

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