今回は意匠についてご説明します。
意匠権とは、物品の美的外観を保護するための権利です。意匠登録出願の際には、物品名、意匠に係る物品の説明、意匠の説明等の記述的事項とともに、原則として六面図を特許庁に提出します。
意匠は言葉で説明するよりも、実際の登録例をお見せしたほうが判りやすいです。そこで、私が代理した案件で登録になった意匠の一例を以下に表示します(意匠登録第1542880号)。詳細な情報は特許情報プラットフォームというデータベースから入手可能です。
左上から順に正面図、背面図、右側面図、左側面図、平面図です。本来であれば底面図も必要なのですが、平面図と対象にあらわれる場合はその旨を説明することで省略できます。
弊所ではAutoCadというソフトフェアを用いて製図しております。意匠登録出願で最も大変な点は、六面図のそれぞれで縮尺などの要素を一致させないといけないことです。
見ての通り、意匠に係る物品はフライパンです。図面中、実線と破線で分けられていますが、これは「部分意匠」制度を利用したものです。部分意匠の詳しい説明は今回、省略させて頂きます。
実線部分(フライパンの底部のデザイン)が、意匠権として保護される範囲です。
つまり、本意匠権者以外は実線部分の意匠をあしらったフライパンを日本国内で製造・販売することができません。ちなみに、破線部分の形状がある程度変わっても権利の効力が及びます。また、完全同一でなくとも類似範囲まで権利の効力が及びます。
特許と同様に、意匠権もきわめて強力な独占排他的権利です。
意匠登録が認められるためには、少なくとも次の要件を満たす必要があります。
(要件1)出願に係る意匠が公知意匠と同一ではないこと
(要件2)出願に係る意匠が公知意匠に基づいて容易に創作することができないこと
これらの要件は、意匠登録出願後に特許庁の審査官が審査します。
私見ですが、特許権にはない意匠権の魅力的なポイントとして、意匠権は税関での模倣品の差し押さえにきわめて有効です。つまり、特許は技術的な部分で権利が付与されるため、輸出入品が特許侵害しているか否かを税関の職員によって判断することはきわめて困難です。その一方で、意匠は物品の美的外観であるため、税関の職員は模倣品であるか否かを比較的容易に判断できます。
商品の販売戦略の一つとして、意匠権を是非ご活用ください。