VOL.8 「著作権」について

VOL.8 「著作権」について

2021年05月14日 【

今回は著作権について、音楽(曲や歌詞)を例に挙げてご説明します。皆さまはフェイスブックやツイッター等のSNSに好きなアーティストの歌詞を載せた経験はありますか?

このような行為が著作権法違反に該当するとして、メディアで度々報道されています。その法的根拠は何なのでしょうか。

 

著作権法上、著作物とは「思想又は感情を創作的に表現したものであって、文芸、学術、美術又は音楽の範囲に属するもの」であることが定義されています(第2条第1項第1号)。

例えば、「富士山の高さは約3,776mである」といった単なるデータは、思想又は感情を創作的に表現したものではないため著作物に該当しません。

「創作的」というのは、誰が表現しても同じようなものを除外する趣旨ですが、芸術性の高低や上手・下手は関係ありません。著作物は創作した時点で自動的に発生するため、必ずしも国に登録を申請する必要はありません(著作権の登録制度はあります)。

歌詞は上記要件を満たせば著作物として認められ、歌詞の著作権者はその歌詞について著作権法上の保護を受けることができます。実際には、ほとんどの歌詞に著作物が認められると思います。

著作権者は例えば、複製権(第21条)、上演権及び演奏兼(第22条)、公衆送信権(第23条)、譲渡権(第26条の2)等々に規定される権利を専有します。ちなみに、これらの総称を「著作財産権」といいます。その他、「著作者人格権」というものがありますが、煩雑になるので今回は説明を省略します。

無権利者がSNSに歌詞などの著作物を無断でアップロードする行為は、複製権や公衆送信権の侵害に該当し得ます。歌詞の一部を無断でアップロードする行為も、その歌詞に対応する楽曲を特定できる場合は権利侵害に該当し得ます。

 

その一方で、著作権法には著作権の制限に関する条文が多く存在し、例えば無権利者の行為が第32条に規定する「引用」に該当すれば、著作権者による権利行使が制限される場合があります。「引用」に該当するか否かは過去の判例に基づいて諸説ありますが、歌詞を使う必然性の有無がひとつの基準になります。「好きなアーティストの歌詞を皆に知ってほしい」という理由だけでインターネット上に掲載する行為は、必然性に欠けるので「引用」に該当しないと思われます。

その他、著作権者の許可なく歌唱する動画をアップロードする行為は上映権及び演奏権の侵害に該当し得ます。アップロードする行為のみならず、一般公衆(不特定多数)の前で楽曲を無断で演奏する行為も権利侵害に該当し得ます。但し、営利を目的としない(報酬がない)演奏行為については、著作権者による権利行使が制限される場合があります(第38条)。

 

インターネットの普及により、SNSを利用して手軽に情報を発信することができるようになりました。それ故、知らない間に著作権侵害を行っているケースが急増しております。どの法律にもあてはまることですが、法の不知は認められません。

著作権には十分にご注意のうえ、楽しくSNSをご利用ください。

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