VOL.13 商標を保護する際の考え方について

VOL.13 商標を保護する際の考え方について

2021年06月18日 【

今回は商標を保護する際の考え方について、事例を基に説明します。

予備知識として、商標登録を受けるためには、保護を求めるネーミングやロゴの他に、ネーミング等を付す商品又は役務を指定する必要があります。

「VAIO」に対する「パーソナルコンピュータ」のような関係です。ネーミングやロゴのみでは商標登録を受けることができない、ということをご理解ください。

 

有名な苺として「あまおう」が知られています。「あまおう/甘王」というネーミングは、2002年に全国農業協同組合連合会(以下「農協」と略記します)が「果実」、「野菜」、「苗」を指定して商標登録を受けています(登録第4615573号)。ちなみに、「あまおう」は品種名ではなく、「福岡S6号」が品種名です。

これにより、農協は「あまおう」というネーミングの苺を第三者が無断で販売する行為を差し止めることができます。農協は「果実」として指定しておりますので、苺以外の果実、例えばバナナ、リンゴ、みかんに対しても商標権の効力が及びます。

ところで、食品業界では特定種類の果実を用いた「菓子」、「飲料」等々が多く存在します。すなわち、苺をはじめとする果実は菓子に応用されやすい実情がありますが、農協は出願当初に「菓子」を指定しておりませんでした。実は商品「菓子」に対して、某菓子メーカーが「あまおう」の商標登録を2003年に受けております。すなわち、農協は「あまおう」というネーミングの菓子を無断で販売することができません。

ちなみに、商標法では商標を登録後3年以上継続して不使用の場合、「不使用取消審判」を請求することで商標権を取り消すことができる制度があります。推測にすぎませんが、農協は出願前に「菓子」について検討した結果、使用する予定がないとの結論に至り、あえて指定しなかったのかもしれません。指定商品に「菓子」を加えると区分数が増え、印紙代も高くなるためです。

 

上述の事例から、商標登録出願を行う際に留意すべき事項として、実際に使用が決まっている商品・役務のみならず、応用される可能性のある商品・役務まで検討することをお勧めします。

その他、商品・役務の指定漏れにも注意すべきです。例えば、店内でラーメンを提供するラーメン店では、「ラーメンを主とする飲食物の提供」以外に、持ち帰り商品として「ラーメンの麺及びスープ」の販売をしているケースがあります。その場合、「ラーメンの麺及びスープ」も併せて指定しなければ包括的な保護が図れません。

商標登録出願の際に留意すべき点は多いですが、次号以降に適宜説明したいと思います。

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