今回は中国における商標登録制度について説明します。
ここ最近、中国で日本の地名を含む商標が登録されたことが問題視されています。
この問題は10年以上前から存在し、2006年に中国でとある個人が「讃岐烏冬」を出願し、後に商標登録された例があります。「讃岐烏冬」を日本語に翻訳すると「讃岐うどん」になります。この登録商標は結局、香川県等が登録異議の申し立てを行ったことで取り消されました。
ここで気になるのが、中国における商標制度です。実は中国の商標制度では、「外国の著名な地名を含む商標は登録が認められない」ことを明確にした規定が存在します(中国商標法10条2項)。すなわち、中国では本来、「讃岐うどん」のような地名+普通名称で構成される商標は登録が認められません。商標登録が認められた理由は単に、十分な審査を行わなかったことによる過誤登録であったものと推測されます。
中国の商標制度と日本の商標制度は大きく変わりませんが、商標の類否判断では中国の方が厳しいケースもあります。例えば中国の審査基準によれば、「外国語の商標が四つ又は四つ以上のアルファベットによって構成し、一部のアルファベットだけ異なり、全体が意味を持たず、又は、持つ意味に明らかな区別がなく、需要者が商品又は役務の出所に対して容易に誤認を生じる場合、類似商標と判断する」とする規定があります。一部のアルファベットが異なっても拒絶される可能性があるというのは、日本に比べて登録のハードルが高いと言えます。
2018年における中国での商標登録出願受理件数は737万件でした。ちなみに日本での商標登録出願件数は20万件に満たないです。
中国で過誤登録が発生する要因は、膨大な商標登録出願を処理しなければならない審査官の負担増によるものかもしれません。