VOL.42 知的財産価値評価について

VOL.42 知的財産価値評価について

2022年01月7日 【

今回は知的財産価値評価についてご説明します。

知的財産価値評価はその名のとおり、企業等が保有する特許権や商標権などの価値がどの位あるかを評価することを指しますが、評価のひとつに知的財産権の金銭的価値があります。

近年では企業買収や事業承継が盛んに行われていますが、買収額に知的財産権の金銭的価値を加えることで、売り手側はより高く売ることができるようになります。

価値評価手法としては、コストアプローチ、マーケットアプローチ、インカムアアプローチがありますが、個別に説明すると煩雑になるので、ここではインカムアプローチの一種であるロイヤルティ免除法について説明します。

例えば、A社が保有する商標権をB社が使用したいと考えているとします。この場合、A社はB社にライセンスを付与することができますが、一般的にB社はその対価としてロイヤルティ費用(≒ライセンス料)を支払う必要があります。その一方で、B社は商標権を自ら所有していれば、ロイヤルティを支払う必要はありません。つまり、B社は商標権を所有することでロイヤルティ費用が免除されることになり、この免除相当額をベースにして金銭的価値を試算する手法がロイヤルティ免除法になります。

ロイヤルティ免除法は過去数年(5期程度)の売上データ、将来の売上予測データ、割引率、法定実効税率、ロイヤルティ料率、等の各数字を揃えれば、所定の計算式に基づいて試算できます。割引率と法定実効税率は公認会計士に算出していただくケースが多いです。ロイヤルティ料率は過去資料を参考にすることができますが、商品役務分野ごとに異なるとともに、同一分野でも一定の幅を有するので、数字を特定するためにはそれなりの根拠が必要になります。また、試算対象となる商標権に無効リスク、不使用取消リスクがある場合は金銭的価値が割り引かれます。

ロイヤルティ免除法は、割引率やロイヤルティ料率などのパラメータをどのように設定するか、将来売上を何年まで見込むかによって試算額が大きく変動します。そのため評価する者は、どのような根拠に基づいて金銭的価値を試算したのかを依頼者に対して丁寧に説明しなければなりません。評価する者にとっては、この点が難関といえます。

知財価値評価は、一般的に知られているDCF法(ディスカウントキャッシュフロー法)を用いることができますが、価値評価がマイナスになるケースがあります。その一方で、ロイヤルティ免除法では価値評価がマイナスにならない点がメリットの一つであるといえます。

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